脳を刺激する歩き方<22>
「背骨」と一言で言っても、
小さな骨の連続から成り立っています。
その骨と骨との間には、柔らかい椎間板があります。
おかげで背骨は180度、
柔軟に曲がるようになっています。
若いときには、椎間板は分厚く、柔軟性を保っています。
しかし、年を取ってくると、次第にすり減って薄くなり、
背骨の骨と骨同士が摩擦を始めます。
これが、背骨を通る神経の束を刺激して、
腰の痛みを引き起こすとされています。
腰痛は、ある程度、年を取ればなりやすい病です。
- 「そうか。ならば腰に負担をかけないほうがいいだろう。
運動は控えめにしよう」
そういう感覚を持つのが一般的でしょう。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
腰痛の原因調査のため、専門家がアフリカの
タンザニアに住む「ハザ族」を調査した結果があります。
ハザ族は、
1日平均15キロも歩く狩猟採集生活を送っています。
私たち先進国の人間であれば、
1万歩歩くだけでもやっとですが、
15キロといえばおよそ3万歩に及ぶ歩数です。
ハザ族は、その日の食事になる獲物を狩りに出かける
「狩猟採集生活」を送っているため、毎日よく歩きます。
これだけ歩いていれば、当然、腰には大きな負担がかかり、
腰痛になっている人も多いのではないか。
調査団たちは、そういう予想を立てていました。
ところが意外な調査結果が出ました。
普通に生活をしている人で腰痛に悩んでいる人は、
なんと1人もいませんでした。
多くの人が腰痛になっているのではないかと
思われていただけに、大変な驚きだったとのことです。
この結果から、
歩くことは腰痛にいいことが分かってきました。
では、なぜ歩くことが腰痛の防止につながるのでしょうか?
一説によると、歩くことで背骨を
刺激するのがよいのではないかとされています。
歩くとき、体は軽く上下に揺れます。
このとき、背骨にも上下の刺激が伝わります。
この刺激によって、椎間板を形成している
コラーゲンの生成を促す効果があるため、
腰痛になりにくいのではないかとされています。
正確なメカニズムはまだ究明中ですが、
いずれにせよ歩くことが腰痛に利くことは
間違いないようです。
- 「そうか。ではさっそく今日から腰痛改善のために歩こう」
ここで、1つ注意も必要です。
腰痛の予防のため歩くのはあくまで、
まだ腰痛になっていない人です。
腰痛になって腰を痛めている人は、
すでに問題を抱えていますから、
歩くことで逆に腰を痛める可能性もあります。
また、腰痛の原因は、単純なようで実は複雑です。
椎間板の異常だけでなく、
精神的なストレスが腰痛に関係することもあります。
すでに腰に痛みを抱えている場合、
素人だけでの判断は難しいため、
必ず担当の医師に相談してからにしましょう。